【 聖夜 -holy night - 】・9
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……ん……?」
どれくらい気を失っていたのだろうか?
そのまま寝てしまったらしく、エドワードが眼を覚ました時には窓の外はうっすらと明るくなり始めていた。
(…う~…、腰怠い…。)
もぞもそと起きあがると、昨夜酷使した腰が鈍痛を訴えている。
後始末はロイがしてくれたのだろう。シーツも新しくなっており、躰もさっぱりとしていた。
朝の冷たい空気にぶるりと身を震わせると、エドワードはベットに潜り込んだ。
隣には、ロイが安らかな寝息を立てており、暖かな体温が感じられた。エドワードはじっとその寝顔を見つめた。
(…前髪、ぼっさぼさでやんの。前髪落ちてると童顔だよな~。)
そっと前髪を梳いて髪を整えてみる。
暫くするとロイの瞼が静かに開き、エドワードの視線とぶつかった。
「…早いじゃないか?…まだ、大丈夫だろう?」
「…おはよ…眼が覚めたんだよ…」
ロイはエドワードの腰を抱き込むと毛布の中に引き寄せる。
触れ合って密着した肌が心地よい。しかし、太ももに触れるロイのモノに、エドワードは焦りを感じた。
「…おいっ…」
エドワードが軽く抗議をすると、まだ眠そうなロイは目を瞑ったまま話を続ける。
「…何もせんよ。寒いんだ、もう少し寝かせてくれ…」
「…俺、抱き枕かよ?」
ずっと残業続きだったロイは疲れているんだろう。仕方なくエドワードも諦めて力を抜いた。
綴じた瞼の下にはうっすらとクマが見てとれる。
「…後で…教会に行こうか…?」
「…え?…何で?」
寝たとばかり思ったロイから話しかけられ、エドワードは突然の内容に驚いた。
「クリスマスは教会に礼拝に行くんじゃないのか?…ああ、私は、無神論者だが…。リゼンブールでは違うのか?」
「…だって、クリスマスは昨日だったろ?…何で今日?」
エドワードも勿論無神論者だったが、確かにリゼンブールに居た頃はアルフォンスと母と三人で出かけていた事を思い出した。
「…何を言っているんだ?昨日は『イブ』で、今日は本当の『クリスマス』だろう…?」
「……はぁっ?」
エドワードは最初、ロイの言っていることが理解できなかった。
「…あれっ?」
「鋼の…。一日日付を間違えてないか?昨日は24日で、今日は25日だぞ?」
「…………」
間違えていた。エドワードはすっかりと、日付を一日間違えていたのだった。
「…どうして誰も教えてくれないんだよ~…」
頭の中で時間がずれたまま行動していて、良く大丈夫だったと思いはしたが、過ぎてしまったことは仕方がない。
(…あれっ…?待てよ?…そうすると…昨日、少尉が言っていたことって…)
エドワードは昨日司令部でしたハボックとのやりとりの食い違いがようやく分かった。
ハボックは、『イブからクリスマスには恋人同士は朝まで一緒に居るのが流行…』と言っていた。
それは正しく、今のロイとエドワードに当てはまるのではないか?そしてホテルが満室になる理由も分かってしまった。
(…マジかよ~…。こういう事かよっ !!)
エドワードは照れて、ロイの胸に顔を埋めた。きっと赤くなっている表情を見られたくなかったからだ。しかし、すでに百面相のようにころころと変わる表情は、全てロイに見られていた。
「…どうした?鋼の…?」
ロイはクスリと笑うと、エドワードの髪を撫でる。
「………いや、ちょっと自己完結した。」
「…そうか?…しかし、今セントラルにはどれくらいこうした朝を迎えた恋人がいるものかな?」
ロイの何気ない一言に、エドワードの心臓が跳ね上がった。何気にさらりとそういうことが言えるのか?と思う。
「…行かないのか?…教会…」
「…神様信じてないヤツが行ってもいいのかよ?」
「大丈夫だろう?信者でなくとも入れるし、それを言ったら結婚式だってそうじゃないか?そんなことを言ったら、信者以外は教会で式を挙げられないだろう?」
「…それもそっかっ…」
「それとも…結婚式、するか?」
「…なっ !! 何、馬鹿言ってんだよっ !! 冗談でも寒いだろがっ !!」
「…私は真面目に言ったんだが…。」
くすくすと、どこが本気だったのかと疑わずにいられない様子でロイは怖い事を言っている。
「…ま、いいけどよ。…じゃあ、今日は礼拝行って何すんの?」
「…考えてなかった。もう、休みを取ることで精一杯で……。」
ロイは大きな欠伸をすると、またウトウトと微睡み始めた。
(…ま、いっか。たまにはこんな日も…。)
エドワードはロイの眠りを妨げないように、自分ももう一度眠りについた。
このブログへのコメントはmuragonユーザー限定です。