【ささやき】
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
――その日、ハボックは災難だらけだった。
「…はぁ…」
部屋の中に溜め息が零れた。
その溜め息の犯人は、ロイ・マスタング大佐。
溜めに溜めた書類を放りだし、脱走しようとしたところを中尉に見つかって執務室に閉じこめられることになった。
しかし、一人にしておけば、またいつ脱走するかも分からないということで。
遅刻をしてきた罰に、ハボックに監視の白羽の矢が当たってしまったのだ。
(……最悪だ…)
ハボックはロイの溜め息を聞きながら、溜め息をつきたいのはこっちだ!と、喉元まで出かかっている言葉を飲み込んだ。
昼食でお気に入りのランチが完売してた、とか。
ラブレターをくれた子の手紙が大佐宛だった、とか。
そんなどうでもいいことから、問題はロイに移って。
どうして仕事を真面目にしないんだ、とか。
俺はついていく人を間違えたんじゃないか、とか。
考えれば考えるほど鬱になる。
取りあえず、自分の仕事もロイの執務室に持ち込んだし、監視しながらでもやらなければならない。
ハボックは応接セットのソファーに座りながら、仕事に取りかかった。
どれくらいたっただろうか?
すでに書類にサインするのに飽きたロイが、何となく監視役のハボックの方を向いた。
「……こいつ……」
そこにはソファーにもたれ掛かって眠るハボックの姿があった。
監視役が寝てどうする?とロイは思ったが、脱走の機会にほくそ笑んだ。
そろそろとソファーの脇を通り向け、脱走を図ろうとしたロイだったが、ふと…意地悪心が湧き、ハボックの後ろに近づいた。
「…ハボック…」
静かに声を掛けてみる。
「…………」
ハボックは目覚めない。
「…ハボック…」
今度は先程より、少し大きな声で。
「…う…ん…」
ハボックが少し、もぞもぞと身動きを始めた。
「…ハボック…」
身動ぐ姿が可愛くて、つい行動がエスカレートしてきた。
耳元で囁くように…。その際、つい息を吹きかけてしまった。
「…あ……っ」
「…え?」
ハボックから漏れたのは、艶っぽい溜め息のような嬌声…。
ロイは己の耳を疑った。
しかし、聞き間違えようもない。
「…ハボック…」
さっきの嬌声がもう一度聞きたくて、わざと耳を舐めるようにして愛撫のような事をしてみた。
「……う……ぁ…」
熱い息を吹きかけられて、ハボックの肩がビクリと跳ね上がり、ぱっちりと目が開いた。
「……え?…えぇ??」
ハボックは、自分の声に驚いて目が覚めたようだった。
訳が分からないといった感じで、顔を真っ赤に染めたハボックに、ロイは何とも言えない気分になってしまった。
「…たい、さ…?」
耳を押さえつつ、きょとんとしているハボックを可愛いと思ってしまったのだ。
ロイは無言でソファーのハボックの脇に座る。
「…大佐?」
ハボックは、突然のロイの行動に驚いて、少し後ずさった。
ロイはハボックににじり寄り、ソファーの端に追いつめた。
「…あっ!!」
そして、バランスを崩したハボックの上に乗り上がる格好で押さえつける事に成功した。
「…あ、の…」
ハボックが引きつった表情でロイを見上げている。
顎に手を掛け、キスをしようと顔を近づけた瞬間の事だった。
―――チュイン――
「「……中尉…」」
「…書類は終わったのでしょうか、大佐?まだでしたら、ハボック少尉で遊ぶのは後になさってください」
突然の銃声に、二人はびっくりしてソファーに身を伏せた。
そろそろと声のする方向を覗きこむと…。
執務室の入り口には、新たな書類の束を抱えた中尉が銃を構えて立っていたのだ。
「……分かった。…後にしよう…」
「…ええ!?」
ロイは渋々といった様子で、ハボックの上から躰を起こす。
ハボックに至っては、何が起こっているか現状を把握できてない様子だ。
「…と、言うことでなハボック」
「…へ?…は、はい?」
「…後で遊ぼう」
にっこりと満面の笑みを浮かべて、早業でハボックの唇を奪った。
「………ぇえええーー??」
ハボックの絶叫が執務室に響き渡った。
――ハボックの災難は、始まったばかりなのかもしれない…。
【END】
…あれ??
こ、これは~…なんだろう?ギャグ?? 二人ともノーマルなようです、ね…?(←オイ?)
自分でも意外な…(滝汗) 『これから始まる』って感じでロイハボに入れてみました☆
【 2005.10. 12 UP 】
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